悪魔の囁きは溺愛の始まり
兄が冷静な声で話し掛けてきた。


「青山海翔。君は?」

「岡崎蒼大です。マリンコーポレーションの部長をしております。」


蒼大さんが深くお辞儀をしたが、兄は冷たい瞳で見ていた。

兄の様子に嫌な雰囲気が立ち込める。


「岡崎部長と言えば………今年から部長になったと噂の…………マリンの御曹司?」

「父がマリン本社で社長をしております。」

「ふ~ん、一花の彼氏?」


兄の低い声に歓迎されていないのが伝わってきた。

『なぜ?』

それしか頭になかった。


「はい、一花さんとお付き合いをさせて頂いております。」

「一花は無難な相手を選んだな。」

「無難?」


兄の言いたい事が理解できた。

マリンコーポレーションの御曹司ともなれば、父は反対しない。

大歓迎だろう。


「親父好みだって話だ。一花はいつも親父の言葉には逆らわないからな。」


棘のある兄の言葉に、私もカチンと怒りが沸いた。


「別に父とは関係ない。偶々、マリンコーポレーションの息子だっただけ。」
< 114 / 200 >

この作品をシェア

pagetop