悪魔の囁きは溺愛の始まり
兄は冷静だった。

そこがムカつく。

いつもいつも冷静で、私だけが子供みたいに喚いているみたいだ。


「一花は世渡り上手だな。」

「はっ?どういう意味よ。」

「親父に文句の言われない相手を選んでるって話だ。渡部ではなく、岡崎部長を選んだんだろ?」

「違う。元々、蒼大さんと付き合ってた。別に父が反対するとか関係ない。」


兄に初めて楯突いた。

父だけでなく、こんな風に恋愛に口を出されるなんて思わなかったからだ。

それでも冷静な兄がムカつく。


「お兄ちゃんも同じでしょ。結局は父に進められたお見合いをして結婚して。」

「………。」

「お兄ちゃんこそ、父のレールに乗ってるだけ。」

「なら、一花が継いでくれたか?俺が好きな女と駆け落ちでもしたら、一花が継いだのかよ。」


兄の怒りが伝わってきた。

凄い睨みを私に向けている。


「好きな女を手放す選択しかなかったんだ。それしか俺には道がなかった。」

「……。」

「だが一花は幸せだな。好きな男が御曹司とか。はっ、本当に世渡り上手だな。」
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