悪魔の囁きは溺愛の始まり
「俺、凄い嬉しいかも。」

「………。」


抱き締められた温もりが心地よい。蒼大さんの背中に腕を回そうとしたが……止まった。


「岡崎部長、ここは会社ですよ。」


掛けられた声は女性の綺麗な声だった。

慌てて蒼大さんから離れようとしたが、蒼大さんの腕が弛まらない。

少し顔を上げて蒼大さんに声を掛けようとしたが、冷たい視線を女性に向けていた。


「…………。」

「岡崎部長、ここは会社ですよ。私は抱き締めてもらった事がないですけど。」


『抱き締めてもらった事?』

蒼大さんから彼女へ。

目に映った彼女の表情は無表情で冷たい雰囲気を纏っていた。

だが彼女は蒼大さんだけを見つめ、無言の二人の関係は容易に想像できる。


「蒼大さんは私に言いましたよね?『彼女は作らない』けど『割り切った関係なら付き合ってやる』と。」


ビンゴ……

一気に蒼大さんへの嫌悪感が溢れ出す。
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