悪魔の囁きは溺愛の始まり
ハワイで感じた嫌悪感が甦る。


「蒼大さん、本気ではないでしょ?」


『蒼大さん………』

私と同じだ。

親しい関係だと突き付けられた気分だ。


「本気だ。」


蒼大さんの言葉が今は薄っぺらく聞こえる。

ナンパするような男だ。

私への言葉も……実は心なんてないのかも。

女を落とすプロセスの一つだったのかも。


「ふっ。」


思わず失笑した。

傷つけた蒼大さんを忘れられなくて

再会してからの甘い言葉で落とされて………

実は他にも女は居たという事実に情けなくなる。


「一花?」


蒼大さんの囁きが耳元で聞こえてくるが、私の心は冷たくなっていた。

割り切った関係なら付き合う?

きっと隣に並ぶ女は誰でもいいんだ。


『一花を忘れられなかった』

『ずっと好きだった』


蒼大さんの本心が分からなくなっていく。

目の前の女性を抱き寄せてキスをする姿が頭を過る。

蒼大さんが目の前の女性を抱く姿が―――
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