悪魔の囁きは溺愛の始まり
社長秘書と言えば信頼が高いだろう。

『私より彼女の方が相応しく見えたのだろうか?』

そんな疑問が次々と浮かんでくる。

鳴り止まない携帯のバイブ音が蒼大さんからだと分かる。

だけど出る気にはなれなく、携帯の電源を落とした。

途端に静かになった携帯を見つめる。


「目の前に現れるとキツい。」


一人言がポツリと呟かれた。

蒼大さんの抱いた人が目の前に現れて動揺した。

この人と比較されたら……と思ってしまう。

これが恋愛経験値の低さかと溜め息を吐いた。

恋愛経験が豊富なら気にならなかった事かもしれない。

結局、オフィスに戻ってきてしまった私は『気まずい』とは思ったが自分の席に座った。

突き刺さる視線は渡部さんしかいない。

戻らないと宣言しておいて、ちゃっかり席に座って仕事をしようとしているのだから。


「青山、喧嘩したのか?」


隣で囁かれた言葉は無視した。

PCを立ち上げて、脇目も振らず仕事に取り掛かった。
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