悪魔の囁きは溺愛の始まり
渡部さんもそれ以上は何も聞いてこなかった。

今日の会議での話し合いを資料に反映していく。水越リーダー、つまり春馬さんとの話も反映させる。

黙々と資料作成に集中した。

その方が何も考えなくていい。


「……やま、青山。」

「へっ?」


変な声が漏れた。

集中し過ぎて聞こえていなかったのだ。

渡部さんが微かに笑ったのが分かった。


「青山、電話らしい。」

「あっ、はい。回して………。」

「岡崎部長だと。」


渡部さんに遮られた言葉により、私は口を閉ざした。

『岡崎部長?』

後輩が私を見て困っている。

チラリと渡部さんを見た。


「俺が出る。回してれ。」


私はどんな顔をしていたのだろうか?

渡部さんが岡崎部長からの電話を回すように指示を出した。


「リーダーの渡部です。今、青山は手が離せない状態ですので、代わりにお伺いしますが?」


隣で渡部さんと岡崎部長がやり取りをしている電話を俯いて聞いていた。
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