悪魔の囁きは溺愛の始まり
資料を手に取り、資料室の壁に凭れ掛かった。

頭を壁に凭れ掛けさせて目を閉じた。


「私の心はどうしたい?」


悩んでも解決してくれない自分の気持ちを整理したくなった。

閉じていた目を開いた。


「よし、決めた。」


資料を元の場所へ戻して、背筋を伸ばして顔を上げる。

真っ直ぐに前だけを見つめて、携帯を耳に当てた。


「もしもし、音?」

「花?どうしたの?」

「突然だけど、今週末に旅行に行きたい。付き合って?」


相手は琴音だ。

彼氏と出掛ける予定があるかもしれない。

だけど女の友情も大切にしてくれていると分かっていてのお願いだ。


「音、付き合って。」

「………はぁ、わかった。明日から?」

「うん、迎えに行く。」

「はいはい、安全運転でね。」

「ありがとう、音。」

「もちろん、波も?」

「うん、これからだけど。」

「はいはい、また連絡して。」


少し呆れた声が聞こえてきた。この声を聞くだけで元気が出てくる。
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