悪魔の囁きは溺愛の始まり
見たことないくらい蒼大さんの雰囲気が冷たい。

渡部さんへ視線を向けるが、まったく動揺した様子はない。


「他にも女?」

「割り切った関係の女。」

「………。」


無言になる蒼大さんに、真実だと突き付けられた気分だ。

さっきの女性は嘘を言ってない。


「俺もいた事があるから強くは言えないが………。」

「なら口を挟むな。」

「この関係を青山は『理解できない』と言ってた。まあ、逆の立場なら同じ事を言うだろうな。」


渡部さんが悔やむように唇を噛み締める姿が目に映る。

渡部さんを見つめていた目と目が合う。


「青山、ごめん。」


悔やむように囁いた弱々しい言葉に何も言い返せない。

渡部さんの想いが痛いほど伝わってくる。


「青山、ごめん。」


歩き始めた蒼大さんに手を引かれ、渡部さんからどんどん遠ざかっていく。

振り返れば、その場に立ち尽くしている渡部さんがいた。

俯いた顔から表情は読み取れない。でも悔やんでいるのが痛いほど伝わってきていた。
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