悪魔の囁きは溺愛の始まり
強引に助手席へ乗せられた。

観念して大人しく車に座っていれば、ゆっくりと走り出した。

車内の空気が重い。


「一花、明日だけど………。」

「ごめん、予定が入ったから。」


蒼大さんの言葉を遮り、明日の予定を断った。


「………予定が入った?」


低い声が吐き出されるが、私だって怯んだりしない。

ここで怯んでいては蒼大さんの思い通りになってしまう。


「明日は一花の親に挨拶へ行く予定だっただろ。」

「ごめん。音たちと出掛ける事になった。」

「音?」

「ハワイで会ったことあるでしょ。」

「………いつ決めた?」


明らかに怒っている。

低い声が車内に響いている。


「今日だけど?だから週末は会わない。それに………暫くは仕事が忙しいから。」

「………。」


はっきりと言うべきだと思った。

これで終わりなら私達はそれまで。


「嫌なら付き合うの止めてもいい。」


勢いで言ってしまった言葉かもしれない。

でも本音でもある。
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