悪魔の囁きは溺愛の始まり
今のまま蒼大さんと付き合っていけるのか………自信ない。

傍からすれば、『たかがそれぐらい』と思われるかもしれない。

でもマリン本社で会った女性の影が脳裏を過ってしまう。

あの人と蒼大さんが―――


「逃げるのか?」

「逃げる?」

「また逃げてる。」


蒼大さんの言いたい事は伝わる。

でも今は逃げたい。


「どこに行く?」

「……決めてない。」

「嘘だな。まあいい。」


窓からの景色を眺める。

どこかに寄るのだろうか?

ご飯とか?


「明日、早いから。」

「そうか。だから?」

「もう帰りたい。」

「飯ぐらい付き合え。」


蒼大さんとご飯とか食べる気分ではない。

だけど言っても無駄だろう。


「一花、逃げても無駄だから。」

「私なんていなくても平気で………。」

「他の女がいるって?」


低い声で遮られた。

私と蒼大さんが育んできた関係が壊れていく気がする。

駄目になる予感がする。
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