悪魔の囁きは溺愛の始まり
「綺麗なお嬢様ですが、随分と気が強いみたいですね。」

「女将も分かるか?」

「ふふっ、岡崎様がタジタジな姿を初めて見ますから。席はお並びで?」

「いえ………。」
「ああ、問題ないよな?」


同時に発せられた私の言葉は掻き消された。

楽しそうな女将が頷いているのを見て諦めた。


「今、ご用意をさせて頂きます。」


女将が挨拶をして個室を出ていく。

二人でテーブルに並んで座る?

繋がれた手は離される気配はない。


「ヤキモチ?」

「へっ?」

「女将がヤキモチだって言ってただろ?」


言ってた気がする。

蒼大さんがニヤニヤと私を見ているが、無視して携帯を取り出した。


「今回はヤキモチに免じて許してやる。」

「許す?」

「先に予定を入れてたのは俺。携帯を無視したのもヤキモチなら許す。」

「違うし。」

「案外、可愛いな。楯突く一花も。」


ニヤニヤな蒼大さんを無視した。

結局、並んで美味しい料理を堪能していた私は単純な女なのかもしれない。

あんなに嫌悪感が溢れてたのに、蒼大さんと繋がれた手を離さなかったのだから。
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