悪魔の囁きは溺愛の始まり
想い

塞がれる

週明け、いつも通りに出社した。

波羽達との旅行が日頃のストレスを発散させてくれたのでスッキリとした気分だ。

オフィスに入れば、渡部さんの姿が目に入り、いつものように挨拶した。


「おはようございます。」

「おはよ。」

「資料はコピーが入りますか？」

「あっ、ああ。」


戸惑ったような声色に渡部さんを見れば、じっと見られている。

私の眉間に皺が寄る。


「渡部さん、何ですか？」

「怒ってないのか？」

「怒っていませんけど。」


ガン見する渡部さんを無視して、資料のコピーに向かった。

クスクスと背後で笑っているのは渡部さんだろう。

席に戻れば、案の定―――


「面白いヤツ。もう機嫌が戻ってるのかよ。まさか岡崎部長と仲直り………。」

「してません。週末に気晴らしに出掛けたので。」


渡部さんの言葉を遮り、横目で渡部さんを見れば目と目が合った。

ふと金曜の帰りの渡部さんが甦ってきた。


「渡部さん、金曜は言い過ぎました。渡部さんにも事情があるだろうし。」

「事情………って。変な想像とかするなよ。」

「なっ、しません。」


いつもの渡部さんに戻っていた。
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