悪魔の囁きは溺愛の始まり
席に戻って黙々と仕事を進めた。

兄に対しても父に対しても怒りが徐々に沸き上がっていた。

仕事の邪魔をされた気分だ。

私と渡部さんはただの上司と部下だ。

それ以上の関係ないてあり得ないし、今後もあり得ない。

なのに、私は渡部さんの部下を外れる。


「少し席を外します。」


多分、もの凄く低い声が吐き出されていたと思う。

渡部さんの視線が突き刺さる。


「青山?」

「すぐに戻ります。」


怪訝な声色が渡部さんの口から聞こえてきたが、私は気にする様子はなく席を離れた。

背中に突き刺さる視線を感じてはいたが、真っ直ぐと社長室へ向かった。


コンコン。


「一花です。」


ノックをして社長室へ入った。

デスクに向かって仕事をしていた父、いや社長が驚いた表情を見せている。


「一花?」

「社長に話があります。」


黙り込む社長は私の雰囲気を察知したのだろう。

明らかに怒りが表情に出ているのかもしれない。
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