悪魔の囁きは溺愛の始まり
唇を噛み締めた私を見据える社長が口を開いた。


「確かに噂も考慮した。」

「渡部さんと私が付き合う事は絶対にあり得ません!」

「それは分からないだろ。突然、一花の気持ちが変わるかもしれない。今も渡部に固執しているように見えるが?」

「上司としてです。」


社長が椅子から立ち上がり、窓へと近づいていく後ろ姿を見据えた。

背を向けたままの社長が口を開いた。


「男と女の関係なんて分からないものだ。だから危険分子は排除する。」


感情なんて読み取れない、冷たい声が響いた。


「一花、岡崎さんとはどうだ?順調か?」

「………はい。」

「一花も26だ。来年には27になる。結婚はしないのか?」


振り返った社長の目と合う。

私の気持ちを伺うような視線が突き刺さる。


「それとも……岡崎さんとは結婚の予定がないのか?」

「………。」

「そうか。なら、私の判断は間違ってない。渡部の部下から外す。」


社長の言葉にグッと唇を噛み締めた。
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