悪魔の囁きは溺愛の始まり
話は終わりだ!と言わんばかりに、仕事を開始した社長室から出てきた。

つまり社長の言葉は

『男と女だから』

私はギュッと拳を握り締めた。

『過ちなんてあり得ない!』

私には蒼大さんがいるし、渡部さんと一緒に仕事をしても恋人として惹かれるなんてない。

私には蒼大さんしか―――


「ふふっ。」


笑いが漏れてしまった。

蒼大さんしか恋人には思えない……そんな自分に気づいてしまった。

いつの間にか蒼大さんだけが恋愛の対象になっていた。


「ふふっ。」


笑うしかなかった。

父は何を危惧しているのだろうか?

私が蒼大さんと結婚でもすれば満足なのだろうか?

安心して渡部さんの部下として働けるのだろうか?


「結婚………。」


『一緒に暮らしたい』とは言われるが、『結婚』の二文字は二人の間で浮上しないキーワードだ。

『一緒に暮らしたい』と『結婚』は別物なの?

疑問が沸き起こった。
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