悪魔の囁きは溺愛の始まり
お腹も満たされ、ぶらぶらと手を繋いで歩く。

四年前、最後の夜に手を繋いで歩いた事を思い出す。

あの時は2度と会う事ないと思っていたけど……今は違う。


「ん?どうした、一花。」

「えっ?」

「俺の手を強く握りしめてる。」

「あっ、ごめん。」


慌てて手を離そうとしたが、その手を今度は蒼大に強く握りしめられた。


「蒼大?」

「一花。今回、俺が一番楽しみにしてる事って何か分かる?」

「えっ?ううん。」

「一花の頭にはない事だろうな。楽しみにしてて。」


ニヤリとする蒼大に眉間の皺を寄せて見上げた。


「きっと一花は驚く。」

「えっ?何?」

「楽しみにしとけ。」


蒼大が何かを企んでいる顔を見せる。

愉しそうな笑みを浮かべて、私を見下ろしているが胡散臭い笑みではない。

きっと私の喜ぶ事に違いない。

だから


「楽しみにしておくよ。」


こう答えていた。
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