悪魔の囁きは溺愛の始まり
青山インテリアでの作業はほぼ完了している。

残りはマリンコーポレーションとの会議で意見を詰めていくだけだ。

そうなると忙しいのはマリン側で、蒼大も急激に忙しくなる。

『一花、会いたい』

メッセージを既読するが、平日は会いに行く時間はない。

私も会いたい気持ちはあるが、蒼大の部屋で待つなんて大胆な行動には出られない。

だけど―――

『一花、会いたい』

『一花、会いに行きたいが遅くなりそうだ』

『一花、部屋で待っててくれないか?』

『一花、泊まりに来れないのか?』

何度も何度もメッセージが入ってくる。

私の名を呼ぶ蒼大の声が電話越しでしか聞けない。

忙しさに、会議だけでしかお互いの顔が見られない。

そんな私は―――

『蒼大、会いたい』

その日、私は仕事帰りに蒼大の部屋へ向かった。

遅くなる蒼大に食べて貰いたくて買い物までした。

久し振りの部屋に合鍵を使って入った。
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