悪魔の囁きは溺愛の始まり
「花、何で逃げる?」

「いや、逃げてない。忘れ物を思い出して。」

「昨日も逃げただろ?」

「昨日?ああ~、楽しそうに話してたから遠慮しただけ。」


昨日の事を思い出して、肩に触れる蒼大さんの手を払い落とした。

その行動に蒼大さんから笑みが消えた。初めて鋭い視線が私に向けられる。


「トイレから戻ってこなかっただろ。」


低い声を吐き出す蒼大さんを負けじと睨む。蒼大さんの手が私の顎を掴んだ。


「おい、蒼大!止めろ!花ちゃんも説明してくれる?俺達、待ちぼうけ喰らったんだし。」


仲裁に入った春馬さんが蒼大さんの手を私の顎から離した。それでも私と蒼大さんは睨み合いを止めなかった。

口を開いたのは波羽だった。


「二股とかプライドが許さないからよ。だって楽しそうに別の女をナンパしてたみたいだから。」

「ナンパ?」


蒼大さんが私に向かって聞き返してきた。私は視線を外し、蒼大さんに背を向けた。


「別の女と楽しめば?私達も別の相手を探すから。」
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