悪魔の囁きは溺愛の始まり
「ごめん、携帯は持ってきてない。海外にはあまり行かないから。」

「なら俺の携帯を教える。日本でも繋がる。」

「…………。」

「毎日、一緒に過ごしてくれ。」


蒼大さんの甘い囁き。

蒼大さんは仮面を被っているだけかもしれない。他の女にも囁くのかもしれない。

『バカンスの恋』は危険だ。

本気の恋ではない。


「わかった。波と音にも聞いてみる。連絡先を教えてくれる?」

「ああ。今、メモしてくる。」


部屋の中に入っていく蒼大さんの背中を見つめる。

背も高く、スタイルも悪くない。顔も整っているし、話術も楽しい。完璧すぎる男は危険だ。

ベランダに戻ってくる蒼大さんと目が合う。


「ホテルの部屋番号も。用事がなければ、俺達と過ごして欲しい。」

「わかった。連絡する。」

「よし、海に行こう。」

「うん。」


昨日は2度と騙されないと誓った。傷つけられたプライドに悔しくて腹が立った。

また同じような気持ちになるかもしれない。だけど蒼大さんの甘い囁きには逆らえないでいた。

それは私が蒼大さんを気になり始めていたからだと思う。
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