悪魔の囁きは溺愛の始まり
過去の代償
――――


やっと離れていく端整な顔を見つめる。

記憶に残る蒼大さんの顔と重なる。

だが、そこに笑みはない。

ハワイでの蒼大さんの顔はいつも笑みを浮かべていた。


「蒼大さん、雰囲気が変わりました?」

「蒼大さんか………懐かしい呼び方。」

「………。」

「一花も雰囲気が全然違う。だけど会ってすぐに『はな』だと分かったけど。」


向けられる鋭い視線はハワイで一度だけ向けられた事があるのを思い出し、ゴクリと唾を飲み込んだ。


「ああ、わかったみたいだね?俺、今、凄く怒ってるって。」

「…………。」

「理由はわかってるだろ?俺を騙した『はな』、いや一花。」

「…………。」

「朝起きたら隣は冷たく、空港に行けばいない。帰国して携帯に掛ければ繋がらない。一花、どういう事だ?」


低い声を吐き出す蒼大さんが記憶から甦ってくる。

私は一歩後退りをしたが、すぐに腕を掴まれる。
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