悪魔の囁きは溺愛の始まり
女子社員の言葉を背に受けて、会議室を出てエレベーターへと向かう。


『絶対に振り向かない人………』


まさか彼女がいるって事?

浮気相手にしようって事?

それが私の払うべき代償なの?


蒼大さんには一途に付き合っている彼女がいるのだろうか。


だから誰にも靡かないし振り向かないのか?

まさか私を?


それはないだろう、もう何年も前の話だし。

開いたエレベーターへと乗り込み、一人の空間でポツリと呟く。


「浮気相手………それが払うべき代償?」

「………ないわ。」


一人言をブツブツと呟いていれば、すぐに一階へと到着して扉が開いた。

受付へ向かい名札を返却をすれば、受付嬢に呼び止められた。


「岡崎部長から伝言です。『会議資料の説明を一部忘れたようなので、帰られる前にご連絡を頂ければ』と。」


渡されたメモには携帯番号が書かれている。チラリと受付嬢に視線を向ける。


「ありがとうございます。」


メモを受け取り、その場を離れてエントランスにあるソファーへと腰掛ける。

取り出したのは自分の携帯だ。


「もしもし青山インテリアの青山一花です。今、伝言を受けましたので。」

「ああ。自分の携帯か?社内用か?」

「…………自分の携帯です。」

「ふっ、ありがとう。」


携帯が切れた。
< 49 / 200 >

この作品をシェア

pagetop