悪魔の囁きは溺愛の始まり
何となくメモを受け取った時点で予想はついていた。

私の携帯で発信されれば番号も分かる。

それを狙ったのだろう。

取引先の部長でもあるし、変な真似はされないとは確信があったのだ。

切られた携帯を鞄へと入れて、帰社する為にまた真夏の陽射しが射し込む中を帰る。

ふとハワイの陽射しを思い出していた。

蒼大さんと見た部屋からの風景は本当に綺麗だった。陽射しが南国を思わせていた。


「ん~、日本は蒸し暑い。また行きたいな。」


ハワイの過ごしやすい気候が懐かしい。


「波と音と………いや、彼氏いるから無理かな。」


波と音には彼氏がいる。

あっ、彼氏がいる事にしておけば……


「ははっ、そうじゃん。」


一人言を呟きながら歩いていて気づかなかったが、ふと肩を叩かれて振り返る。


そこには――――


「怖い奴。一人言が多すぎ。」


毒舌を吐くのは打ち合わせを済ませた渡部さんだ。
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