悪魔の囁きは溺愛の始まり
そう、私はずっと後悔していた。

あのハワイでの出来事を――――


『ずっと一緒にいたい。』

『空港に何時?見送る。』

『帰国してからも会いたい。』

『連絡先を教えて。』


彼の言葉に嘘はなかっただろう。

私もわかっていて嘘をついた。そして彼を傷つけたかもしれない。

ずっと心の片隅で後悔していた。


「青山、前に踏み出せたら、俺の事を考えてみて?」

「えっ?」


聞き間違いだろうか?

俺の事を考えてみて?


「2度も言わせるな。まあ、自分に自信が出来たら、もう一度伝える。」


渡部さんが大きく深呼吸をして私を見た。目の前には自社が建っている。


「青山はお嬢様だからな。」


一言だけ呟いて会社へ戻っていく。その後ろ姿を見つめていれば、渡部さんに怒鳴られた。


「青山、行くぞ。打ち合わせの続きだ。」

「はい。」


私は急いで渡部さんの後を追い掛けた。
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