悪魔の囁きは溺愛の始まり
チラリと兄を見れば、僅かにネクタイを弛め、寛ぎモードだ。


「渡部さんを信頼してるのね?」

「優秀だし、カリスマ性もある。若手だが十分に実力もあると思うが?一花は違うのか?」

「ううん、違わない。ただ………毒舌なのがね。」

「別に社内だけだろ。なら問題ない。」


クスクスと笑い、立ち上がる兄を目で追う。一度私を見下ろした兄が仕事に戻るようだ。


「いつでも相談しろ。一人で背負うなよ。」

「ありがとう。」


いつも私を心配してくれる。

私も仕事を再開しようと席へと戻る事にした。まだオフィスには社員が数名残っていた。

勿論、隣の席の渡部さんも残っている。


「青山、もう帰れ。」

「もう少しだけ。渡部さんこそ、私は気にせずに帰って下さいね。」

「………一緒に帰るか?」


渡部さんの誘いにチラリと隣を見た。

何となく照れてる?

急にどうしたのだろうか?


「変ですよ。」

「………誰に言ってる。」

「渡部さんに。」


クスリと笑いが溢れてしまった。
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