悪魔の囁きは溺愛の始まり
渡部さんが何やら資料を渡してきた。

それを手に取り、渡部さんの顔を見上げる。


「ほら、参考になるだろ。今回のプロジェクトは青山がメインに担当する、初めての大きな仕事だろうから……参考にしろ。」

「ありがとうございます。」

「気をつけて帰れよ。」

「お疲れさまです。」


渡部さんも心配してくれていた。今回のプロジェクトは私にとって初のメイン担当だ。

何だかんだと面倒を見てくれる渡部さんには感謝だ。

残った仕事に取り掛かる。

明日は――――


「はぁ~。」


つい溜め息も溢れる。

蒼大さんと約束したんだった。それに『夜には連絡を入れる』とも言っていたし。

頭を振り、蒼大さんを追い払う。

まずは仕事を片付けなくては。

デスクに向かい集中した。


「一花、帰れるか?」


背後から掛けられた声にビクリとした。集中していて気づかなかったのだ。


「おっ、今日のマリンコーポレーションとの議事録か。」

「うん、もう終わるから。」

「駐車場にいる。ちゃんと終わらせて来い。」

「うん。」


今日の仕事を片付けて、急いで兄の待つ駐車場へと向かった。
< 57 / 200 >

この作品をシェア

pagetop