悪魔の囁きは溺愛の始まり
兄の車で家まで送ってもらう。流れる景色を見ながら明日の約束の事を考える。

蒼大さんに復讐されるほど憎まれているのだろうか。


『彼女になれ。』


蒼大さんは何を考えてる?


『絶対に振り向かない人。』


一途に愛する人がいる?

何年も前の私を忘れていなかったのは確信できる。何年か振りに出逢った筈なのに、すぐに私だと分かったみたいだから。

私も傷つけた人が忘れられなかった。でも雰囲気が別人のようだし、見た目もハワイとは違っていて直ぐには思い出せないでいた。

蒼大さんは……私をどうしたい?


「………ちか、一花、おい、一花。」

「ん?」

「ん?じゃない、着いた。」

「あっ、ごめん、考え事をしてた。お兄ちゃん、ありがとう。」

「仕事か?」


車から降りようとドアに手を掛けたが、心配そうな兄の声に振り返り笑みを見せた。


「仕事じゃない、プライベートの悩み。仕事は順調だから。」

「そうか。変な男に引っ掛かるなよ。」

「ははっ、そうだね。じゃあ、おやすみ。」


兄の車から降りて玄関へと向かう。
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