悪魔の囁きは溺愛の始まり
ピロピロ……、ピロピロ……。


人も疎らになったオフィスになる携帯音。相手は予想通りの人だ。


「もしもし。」

「着いた。会社の前の道路にいる。」

「すぐに行きます。」


荷物を片付けて、急いで会社の前の道路に走っていく。

待たせるのは悪い。

車に凭れて立っている蒼大さんを見つけるが、やっぱり見た目は抜群だ。


「お待たせしました。」

「ああ、乗れ。」


高級外車だ。

助手席のドアを開けて促すので、助手席へと乗り込んだ。

運転席に乗り込んだ蒼大さんが車を発進させた。


「ハワイ料理でいいか?」

「………お任せします。」


何でハワイ料理なんだ。

私への当て付けか?

ムッとすれば、クスクスと笑う蒼大さんを睨めば、運転しながら笑っている。


「本当に媚びない女。」

「嫌なら本命の彼女とハワイ料理でも食べれば?」

「本命の彼女?誰の事だ?」

「聞きましたよ。蒼大さんの会社の女子社員から『絶対に振り向かない人』だって。」
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