悪魔の囁きは溺愛の始まり
二人っきりの個室に緊張が走る。

車では無言だった蒼大さんが気になる。

何を言われるのだろうか。


「一花、誤解してるみたいだが、俺には確かに本命の彼女はいる。」

「そう。」

「一花、お前だ。」

「はっ?」


俯き加減だった顔を上げて、蒼大さんをマジマジと見つめる。

よっぽど間抜けな顔をしていたのか、蒼大さんが笑いだした。


「だから本命の彼女は一花、お前だ。」

「えっ?意味が?だって私とは昨日再会したばかりだし、私の事を憎んでるでしょ?」

「別に憎んでない。」


蒼大さんが穏やかな笑みを見せる。

その表情がハワイでの記憶を甦らせていく。

ハワイでも私をそんな表情で見つめていたのを思い出してきた。


「蒼大さん?」

「確かに傷ついた。二度と会えないショックに悔し涙も流した。でも………。」

「………。」

「俺は再会した。傷つけられたのは事実だし、滅茶苦茶にしてやりたい気持ちもあった。それよりも出逢えた事に感謝したい。」


私に向けられる蒼大さんの笑みは私のハワイでの蒼大さんと重なる。
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