悪魔の囁きは溺愛の始まり
次の日も同じ時間、同じ場所で待ち合わせをした。

携帯をデスクの上に置いて連絡を待っていれば、光る携帯を確認する。

『到着した』

メッセージを読み、帰り支度をしてオフィスを出ようとした。


「副社長と待ち合わせか?」

「えっ?」

「携帯を確認してただろ。」


渡部さんに背後から声を掛けられ、振り返り首を横に振った。


「いえ、知り合いと夜ご飯に。会社まで迎えに来てもらったので。」

「ふ~ん、知り合いね。」

「お先に失礼します。」


待たせては悪いので早々に話を切り上げ、急ぎ足で蒼大さんの車へ向かう。

昨日と同じ場所に車に凭れて立っている蒼大さんを見つけた。

近づけば、助手席のドアを開け促してくれて、蒼大さんの運転で静かに発進した。


「今日はちょっと付き合って欲しい場所がある。そこでいい?」

「あっ、はい。お任せします。」

「だから敬語で話すな。」


クスリと笑う蒼大さんに私も頷いた。

数年恋愛からは遠ざかっていた。久し振りの感覚にドキドキしている自分に気づく。

チラリと運転中の蒼大さんを見るが、なんか普通だ。

私だけが緊張しているみたいに感じる。
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