悪魔の囁きは溺愛の始まり
「一花。」


肩を叩かれてビクリとした。

頭の中で考え込んでいて、お店に到着していたのに気づかなかった。


「一花、どうした?」

「何でもない。行く?」

「何でもなくないだろ。ずっと上の空だし。」

「考え事してた。」

「何を?」

「ん~、言えない。行く?」


お店に行こうと車のドアを開けようとするが、どうやらロックが外れてないらしい。

運転席に座る蒼大さんを見る。


「ロック。」

「俺には何でも言え。」

「はっ?言えない事もあるでしょ。」

「俺は何でも知りたい。変な不安にさせたくないし、勝手に俺の前から消えたりするな。一花、言えよ。」


蒼大さんの瞳が不安そうに私を見つめている。

頬に伸びてきた手がゆっくりと撫で始めた。


「消えるつもりか?」

「えっ?」

「また一週間したら消えるつもりか?」


その言葉に息を呑んだ。

『一週間…………』

私と蒼大さんがハワイで過ごした時間だ。
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