悪魔の囁きは溺愛の始まり
私を見つめていた瞳が逸らされ、運転席に深く腰かけた蒼大さんが大きな溜め息を吐いた。

両腕で目を隠して、私から顔を逸らすように上を見上げている。


「女々しいんだよ、男って。いつまでも過去の女を引き摺る。」

「…………。」

「たった一週間だけど……俺には一花がドストライクで、それ以上に想える女なんて現れなかった。」

「…………。」

「だから再会した時は会議になんて集中出来ないほどで。早く一花を俺のモノにする事だけを考えてた。」


背けていた顔を私へと向け、口元を押さえる蒼大さんの照れた表情に本心が伝わる。


「『彼女になれ』と強引なのは仕方ないだろ。『何でも言え』と言いたくなるのは仕方ないだろ。」

「………。」

「二度と消えないように………二度と別れないように………縛りつけとかないと俺が不安なんだ。」


蒼大さんの両手が私の頬を挟み、顔を近づけてきた。額と額を合わせ、目の目が見つめ合う。


「俺にとって一花が最高の女なんだ。」

「うん、ありがとう。」

「約束しろ。俺の前から二度と消えたりしないって。」

「わかった。」

「よし!飯に行くぞ。」

「うん。」


私達は連れてこられた店内に入っていった。
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