悪魔の囁きは溺愛の始まり
こんな顔で蒼大さんと過ごす?

こんな気持ちで蒼大さんと過ごす?


「帰ろうかな。」


呟いた言葉に蒼大さんから反応はない。

聞こえなかったのかな?


「蒼大さん………。」

「無理。帰さないし、誰にも渡す気はない。」


ちょっと怒った口調の蒼大さんに、蒼大さんも傷つけているのではと思う。

無言のまま、蒼大さんのマンションへ向かうかと思いきや……ショッピングモール?

駐車場に停めた蒼大さんが私を見る。


「お酒や食べ物を一緒に買いたかったから。」

「あっ、うん。」

「一花。」

「うん?」

「俺の事はどう思ってる?」

「…………まだ気持ちがはっきりと分からない。だけど…………。」


蒼大さんに微笑んで見せた。傷つけたくなかったし、渡部さんの言う同情とは違うから。


「きっと好きに傾いてる。ハワイで過ごした時間は本当の恋人みたいで。それが今、同じ気持ちに傾いてきていると思う。」

「そうか。」

「もう少し待ってくれる?自分の気持ちがはっきりと分かるまで。」

「ああ。」


手を繋がれ、ショッピングモールへと入っていく。

この繋がれた手も嫌じゃない。
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