悪魔の囁きは溺愛の始まり
蒼大さんと買い物なんて変な感じだ。

いつもいつも外食をするってイメージだったから、二人で買い物をするなんて思わなかった。


「一花は料理する?」

「少しはやるよ。蒼大さんは?」

「俺も。一人暮らしだから一応は出来る。」

「蒼大さんの方が上手だね、きっと。」

「いいよ、作ってやるし。」

「優しい。」

「今さらだろ。」


クスクスと笑いながら食品を選んで、お酒コーナーへと向かった。


「一花、眠くなるタイプだったよな?」

「覚えてるの?」

「当たり前。何でもいい?」

「うん。」


蒼大さんがお酒に手を伸ばしたまま、動かないでいた。不思議に思い、蒼大さんの手元を覗いた。


「このお酒を買っていい?」

「うん。」

「覚えてないか?一花に逃げられた日、俺らが飲んでた酒だ。今日は逃げないよな?」

「………うん。」

「一緒に飲もう。っで記憶を塗り替えたい。」


染々と呟いた蒼大さんに胸が痛む。

ずっとこのお酒を見るたびに思い出していたのかもしれないと。
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