悪魔の囁きは溺愛の始まり
「一花、貸して。」

「いや、いいよ。」


強引にドライヤーを奪われ、髪を乾かしてくれる。


「俺、こうやって女の髪を乾かしてみたかった。」

「へっ?」


女の髪を乾かしたかった?


「彼女の髪を乾かしてやりたいの。案外、自分の女って感じるんだ。」

「そうなの?」

「だから遠慮とかいらない。俺が自分の女って自覚したいだけだから。」


チラリと後ろに立っている蒼大さんを鏡越しに盗み見れば、照れているのが伝わってくる。

蒼大さんの手が気持ちいい。


「乾かしてもらうと気持ちいい。」

「なら遠慮とかしなくていい。」


甘やかし過ぎな気もする。


「髪の色。」

「えっ?」

「変わったよな?前は黒髪だったけど、今は染めてるのか?」

「よく覚えてるね?蒼大さんは染めないの?」

「一花も覚えてるんだな。俺は………立場上、黒髪だ。」


私達は出掛ける準備をしていくが、先に準備を終えたのは蒼大さんだった。

急いで準備を終わらせた私は、普段より若く見える蒼大さんに声を掛けた。


「お待たせです。」

「行くか。」


蒼大さんに手を繋がれ、私達は駐車場へと下りていった。
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