悪魔の囁きは溺愛の始まり

信頼の重み

傍から見れば、見つめ合っているカップルかもしれない。

だけど私は完全に蒼大さんの心の中を信頼していなかった。

ハワイでの印象は口先だけの愛に思えたからだ。だから嘘をつけたのかもしれない。

蒼大さんが傷ついても、私との事は忘れてしまうだろう………と心の隅で思っていたから。


「言うな、一花も。俺に媚びない部分は全然変わってない。」

「経験豊富そうね、蒼大さんは。」

「社会人になるまでの話だ。」


先に視線を逸らしたのは蒼大さんだ。

一口コーヒーを飲む仕草も絵になる。


「はっきり言う。確かにハワイでは企んでた。」

「そうなんだ。」


私も紅茶を一口飲み、心を落ち着けるように小さく深呼吸した。

蒼大さんが口を開くのをじっと待った。


「あのさ、今だから言うけど。今は本当に一花が好きだし、今の俺を信じて欲しい。」

「………。」


観念したかのように目の前で大きく息を吐き出した。

心の中では良い話ではないのがわかってきた。
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