悪魔の囁きは溺愛の始まり
お互いが植え付けられた過去を乗り越えられていないのだ。



「信頼の重みが分かるね?」


「………。」


「今の蒼大さんを見てるよ。私を好きだと言ってくれるのは本心だとわかってる。」


「………。」


「でも『信じていいの?』って心の奥で思ってる。」



蒼大さんが唇を噛み締める。その唇に手を伸ばせば、驚いた表情を見せた。


私が蒼大さんの顔に触れるのは初めてかもしれない。



「悔しい?後悔してる?」


「ああ。」


「私も後悔してる。だって蒼大さんを不安にさせてるから。」



唇から頬に手を移動させて優しく触れる。


蒼大さんが固まって私を見ている姿に笑いが溢れてしまう。



「そんなに驚かなくても。」


「初めてだろ?こんな風に俺に触れてくれるのは。」


「だって唇を噛み締めてるから。それに、この一週間で蒼大さんは特別な存在になってるから。」


「特別な存在?」



小さく囁いた蒼大さんから手を離した。
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