お見合い結婚時々妄想
声がする方に振り向くと、金髪碧眼の背の高いイケメンと言うか、ナイスガイが手を振っていた

「ハリウッドスターがいる……」


思わず呟いてしまった
慎一郎さんと相川さんは笑うのを必死に我慢していたけど

『シン、久しぶりだね。元気そうだ』
『ご無沙汰しております。ミスターコックス。日本支社長就任おめでとうございます』
『堅苦しい挨拶はやめてくれ。以前のように、ブライアンと呼んでくれ』
『分かりました。ブライアン』


2人は握手をしながらお互いの再会を喜んでいた
ふと、ミスターコックスが私に目を向けて、にっこり笑ってこう言った


『シン、この可愛らしい人が君のワイフかい?』


慎一郎さん!
金髪碧眼のナイスガイが、私を見て笑ってますよ!
私、どうすればいいんですか!?


「祥子」


慎一郎さんは優しく私の背中に手を添えて、耳元で囁いた


「大丈夫。落ち着いて。君なら出来るから」


その言葉で私は落ち着きを取り戻した


『はじめまして、ミスターコックス。妻の祥子です。お会い出来て光栄です』


ミスターコックスと握手をかわしているとき、彼はじっと私の顔を見ていた


『あの、ミスターコックス?』
『いや……私がイメージしていたシンのワイフとは、随分違っていたので……』
『ブライアン……』


慎一郎さんが何か言おうとしたけど、ミスターコックスが違うんだと言うかのように、言葉を続けた


『まさかこんな素敵なヤマトナデシコをパートナーに選ぶなんて、流石だよ、シン』
『ありがとう、ブライアン』


どうやら、第一関門は突破したらしい


『ショウコ、今日は来てくれてありがとう。シンとは彼がアメリカにいた頃にとってもお世話になってね。どうしても会いたかったんだ』
『ありがとうございます。私も主人からミスターコックスのことをよく聞いています。とても素敵な方だと言っていました』
『シンがそんなことを?』
『はい。それにDインテリアの商品も好きみたいで、私達の家にある家具は、ほとんどDインテリアのものなんです』
『そうか!それは嬉しいな』


家にある家具はほとんど慎一郎さんが揃えてくれていた
私の希望の物を聞き、選んでくれたのだ
そのほぼ8割がDインテリアの家具だと気付いたのは、結婚してすぐのことだった


『祥子、気付いてたの?』
『ええ。全部私の好みだったから嬉しかったの』


ミスターコックスは満足そうに頷いて、慎一郎さんに話しかけた


『アメリカにいる頃のシンは仕事は出来るが、女性の影が全くなかったから、実はゲイなんじゃないかと思ってたときもあったんだよ』
『まあ』


慎一郎さんは苦笑しながら、反論した


『思ってただけじゃなく、直接聞いてきたじゃないですか。君はゲイなのか?って』
『そうだったかな?』
『ええ。だから僕は言ったんです。ばれてしまってはしょうがない。今夜お相手してもらいましょうかってね』
『ええっ?慎一郎さんそんなこと言ったの?』


ミスターコックスは声を出して笑った


『そうなんだよ、ショウコ。しかもシンはごく真面目にそう言ったから、僕は真剣に断ったんだ。そんな僕を見て、シンは鼻で笑って、冗談だと言ったんだ。なんてひどい奴だと思ったよ』
『そうなんですね。でも本当に女性の影はなかったのかしら?慎一郎さん』
『し、祥子?』
『だって、これだけハンサムなんだもの。アメリカの女性だって放っておかないでしょ?ま、私と出会う前だから、とやかく言いませんけどね』


と、ちょっと意地悪く言ったら、珍しく慎一郎さんが慌てていた
それを見たミスターコックスは、大爆笑していた


『シンが慌てているところ見れるなんて。今日はなんていい日なんだ』


そうしていると、ミスターコックスの秘書の方が呼びに来た


『シン。とにかく今日は会えて嬉しかった。またゆっくり会おう。その時はショウコも一緒にね』


と私にウインクをして、秘書の方と一緒に去って行った
私は知らないうちに、ふうっと大きな息を吐いた


「祥子、お疲れさま」


上から優しい声が降ってきた
見上げると、慎一郎さんがにっこり笑っていた


「慎一郎さん……私、ちゃんと出来てた?」
「ああ、完璧だったよ」


相川さんも満面の笑顔だ
よかった……
安心したら緊張がとけて、ちょっとよろけてしまった


「祥子!大丈夫?相川。」
「はい。祥子さん、こっちへ」

2人はパーティー会場の外に連れ出してくれて、近くにあった椅子に座らせてくれた
相川さんは「水を貰ってきます」と、また会場に戻って行った


「祥子。大丈夫?」
「大丈夫よ慎一郎さん。安心したら、ほっとして力が抜けただけだから」
「ごめんね?祥子」
「なんで、慎一郎さんが謝るの?おかしな慎一郎さん」


私が微笑むと、慎一郎さんもやっと少し笑った


「お水持って来ました。祥子さん、どうぞ」


私は相川さんお礼を言って、お水を受け取った


「部長、そろそろ戻った方が……コックス支社長の挨拶が始まりそうです」
「そうか」


心配している慎一郎さんに私は笑顔を向けた


「私は大丈夫よ、慎一郎さん。行って来てください。相川さんが付いててくれてますから」
「はい、もちろんです。絶対祥子さんを1人にはしませんから」


慎一郎さんはため息をつきなからも、分かったと頷いた


「相川、祥子のことを頼む」
「はい」


慎一郎さんは私の頬に手を当てた


「じゃ行ってくるね、祥子」


私はその手の上に自分の手を重ねた


「行ってらっしゃい」


そうして、慎一郎さんパーティー会場に戻って行った
私はゆっくりと水を飲んだ


「祥子さん、本当にお疲れさまでした」
「いえ、私は何も……相川さん、ありがとうございました。色々助かりました」


頭を下げると、相川さんは話してくれた


「部長が言っていました。本当は祥子さんをこんな場所に引き摺り出したくないと。随分会社にも、掛け合ったみたいなんですけど……」
「そうなんですか」
「祥子さん、言いにくいことなんですが、部長はまだまだ出世すると思います。そうなったら……」
「ええ、分かってます。こういう機会が増えるということですよね」
「はい」
「私、なんだか凄い人と結婚しちゃったんですね」


私がそう言うと、相川さんは苦笑していた
すると、会場の入り口を見て息を飲んでいたので、私も目を向けた
そこには、とても綺麗なスタイルのいい女性が立っていた
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