お見合い結婚時々妄想
妄想のきっかけ ★慎一郎視点★
祥子が相川にお礼をしたいからと言ったのがきっかけで、海外事業部の部下達ほとんどが、家に来ることになった
祥子も楽しそうで、何の料理を作ろうかと色々考えているのを見るのは、僕としても嬉しかった
何せ、ここ最近祥子の楽しそうな顔を見るのは久しぶりだったから
会社の都合……と言うか、三浦常務の個人的な恨みかもしれないが、祥子をあんな場所に出すのは、僕としても嫌だった
祥子が無理をして頑張っているのは目に見えていたし、それをどうにも出来なかった自分が情けなかった
結果的に祥子は完璧に対応して、三浦常務の鼻を明かした形になった
でも、まさか相川に
「可愛らしくなりましたから」
と言われるとは、夢にも思わなかった
その時の部下達の顔と言ったら……
それから数日後、第3課の橋本から
「奥さんに渡して下さい!」
と写真を渡された
別に見るなと言われなかったので見てみたら、僕のびっくりしたような間抜けな顔が撮られていた
こんなもの撮るなよ……と、頭を抱えていると、相川が
「祥子さん、その写真貰ったら喜ぶと思いますよ」
としれっと言った
睨んでやったら、ニヤっと笑って今日のスケジュールを淡々と読み上げた
内心ため息をつきながら、早く帰って祥子の手料理が食べたいなと思った
そんなある日、仕事中に祥子からメッセージが届いた
『お義父さんの所に行ってきます。夕飯はお義父さんと一緒に食べるので、ちょっと遅くなるかもしれません。また連絡するね』
僕も今日は早く帰れそうもないと、朝出る時に言っていたので、祥子も1人でいるよりは父と一緒にいた方が楽しいだろうと思い
『分かりました。もし迎えに行けたら行くので、帰る時は連絡下さい。父をよろしく』
と返信した
最近実家に帰ってなかったので、父が祥子に連絡して出て来るように言ったんだろうと想像して、早めに仕事を切り上げて帰ろうと思った
しかし早く帰ろうと思ったのだが、なかなかキリがつかず、21時を過ぎようとしていた
祥子からも連絡がなかったので、休憩がてら実家に電話をかけようと席を立とうとしたとき、見慣れない番号から電話がかかってきた
「もしもし?」
「警察のものですが、皆川祥子さんのご主人でしょうか?」
「ええ、祥子は妻ですが……」
「奥さんが、事故に遭われまして」
「事故!?妻がですか?」
僕の声に部下達が注目した
「それで、妻は?」
「大丈夫です、命に別状はありません。ちょっと車と接触して転んだ時に、足を挫いた程度ですので。すぐに病院に来られるでしょうか?」
「すぐに行きます」
「分かりました。場所は……」
「……はい。はい。分かりました。すぐ行きますので。はい、お手数をおかけしました」
電話を切ると、みんなが心配そうに見ていた
「命に別状はないらしい。大丈夫だから」
そう言うと、みんなほっとした顔をした
「相川、悪いが後のことは……」
「分かってます。さっきタクシーを呼びましたので、もう会社前に着いていると思います。それと、どんなに遅くなってもいいので連絡してください。俺だけでもいいので」
「……分かった。じゃ行ってくる」
会社の前に着いていたタクシーに乗り込み、病院へ向かった
その途中、父と義母に連絡をしたら2人ともすぐに向かうからと電話を切った
警察の人は命に別状はないと言っていたけど、祥子に会うまでは安心出来なかった
もし、祥子に何かあったらどうしようとそればっかり考えていた
手が震えて止まらなかった
病院に着いて、病室がどこか聞き、急いで向かった
祈るようにドアを開けた
「慎一郎さん……」
そこには、右腕と右足に包帯を巻かれて、右頬に傷を作った祥子がいた
「祥子……」
思わず抱きしめた
よかった生きてたと、やっと安心できた
僕の腕の中に祥子がちゃんといる
神様なんか信じていなかったが、この時ばかりは心から感謝した
「慎一郎さん、心配かけてごめんなさい」
祥子が左腕だけで僕を抱きしめた
「帰るとき連絡してって言ったのに、どうして連絡くれなかったの?警察から電話があったとき、どんなにびっくりして、心配したか祥子に分かる?」
体を離して、祥子の左頬に手を当てた
祥子は下唇を噛んで、目に涙を溜めていたが、僕は続けた
「会社からここに来る間だって、警察の人は命に別状はないと言ってたけど、本当はどうなんだろうって、もしも祥子に何かあったらどうしようって、そればかり……」
思わず、声が詰まった
祥子は涙をポロポロ流していた
「でも良かった。祥子、生きてた……」
自分の目から涙が零れたのが分かった
祥子がそれを拭ってくれた
今は、それだけで充分だった
祥子の話によると
父と夕飯を食べて、さあ帰ろうとした時、まだ20時前だったので、僕もまだ仕事だろうからと、帰り着いたら連絡しようと思ったらしい
父も、送って行こうと申し出たのだが、電車もあるからとそれを断り、1人で帰っていた途中で、事故に遭ってしまったと
そうこうしていたら警察の方と、車を運転していた中年の女性が病室にやってきた
その女性はこっちが恐縮するくらい必死に謝罪し、これからもちゃんと誠意を持って対応しますからと、警察の方と一緒に帰って行った
それと入れ替わりに、父が到着した
「祥子さん!大丈夫か?やっぱりあの時、送って行くんだった。本当に済まない。慎一郎、本当に申し訳ない」
「お義父さん!頭を上げてください。私の不注意なんですから」
「いや、でも」
「父さん、もういいから。こうして祥子も無事だったんだし。誰が悪いとか、そんなのないから」
「でも、本当に大丈夫なのかい?」
「足は挫いてるけど、あとは大したことないって。念の為、明日は頭の検査するから、まだ退院できないけど、大丈夫だから父さん」
それを聞いた父はやっと安心した顔をした
「お義父さん、心配かけて申し訳ありません」
「大したことなくてよかった。何かあったらどうしようかと思ったよ。慎一郎、加山さんは?」
「すぐに向かうとは言っていたけど、まだかかるんじゃないかな」
義母が到着するまで時間があるだろう思い、相川に連絡しようと病室を出た
相川に、祥子はちゃんと無事だったからと伝えると本当に安心してくれて、他の部下達にも伝えておくと言ってくれた
「それと、明日は午後から出勤してくれればいいですからね、部長」
「いや、明日の午前中は来客の予定があっただろう?」
「大丈夫ですよ。部下を育てたのはあなたですよ、部長。神崎係長と、俺で対応しますので。第2課の小野課長も了承済みです」
「分かった。頼んだぞ」
「はい。それじゃ」
部下を育てたのはあなたですよ、か……
相川も言うようになったと思いながら、病室に戻ると、中から義母の声が聞こえてきた
明らかに怒った声だった
「どれだけ心配したと思ってるの!だから考え事しながら歩くなって、あれだけ言ってたでしょ!30にもなって、そんなことも分からないの!」
父が義母をなだめているが、一向に収まらない
祥子も、大きな声出さないでと反抗してるし、義母を連れて来たのだろう、義兄の修司さんも呆れた顔をしている
「あんたに何かあったらどうしようって、そればっかり……祥子、子供が親より先に逝くほどの親不孝はないんだからね。頼むから、それだけはしないでちょうだい」
「お母さん……」
「あんたたち3人が先に逝ってしまったら……母さん、気が狂って死んでしまう……」
そう言った義母の後ろ姿は震えていた
「お母さん、ごめんなさい」
「そうだよ、母さん。俺も祥子も昇司も、母さんより先になんか逝かないから。ちゃんと、母さんを見送るまで、死なないって」
「頼むよ、本当に。頼んだからね?」
僕と父は、なんとなく病室を出た
「父さん」
「どうした?」
「親って凄いね……」
父はふっと笑って言った
「父さんもお願いしていいか?」
「何?」
「お前たちも、父さんより先に死なないでくれ。頼む」
「うん、分かってる」
しばらくの間そうやって、父と2人で座っていた
祥子も楽しそうで、何の料理を作ろうかと色々考えているのを見るのは、僕としても嬉しかった
何せ、ここ最近祥子の楽しそうな顔を見るのは久しぶりだったから
会社の都合……と言うか、三浦常務の個人的な恨みかもしれないが、祥子をあんな場所に出すのは、僕としても嫌だった
祥子が無理をして頑張っているのは目に見えていたし、それをどうにも出来なかった自分が情けなかった
結果的に祥子は完璧に対応して、三浦常務の鼻を明かした形になった
でも、まさか相川に
「可愛らしくなりましたから」
と言われるとは、夢にも思わなかった
その時の部下達の顔と言ったら……
それから数日後、第3課の橋本から
「奥さんに渡して下さい!」
と写真を渡された
別に見るなと言われなかったので見てみたら、僕のびっくりしたような間抜けな顔が撮られていた
こんなもの撮るなよ……と、頭を抱えていると、相川が
「祥子さん、その写真貰ったら喜ぶと思いますよ」
としれっと言った
睨んでやったら、ニヤっと笑って今日のスケジュールを淡々と読み上げた
内心ため息をつきながら、早く帰って祥子の手料理が食べたいなと思った
そんなある日、仕事中に祥子からメッセージが届いた
『お義父さんの所に行ってきます。夕飯はお義父さんと一緒に食べるので、ちょっと遅くなるかもしれません。また連絡するね』
僕も今日は早く帰れそうもないと、朝出る時に言っていたので、祥子も1人でいるよりは父と一緒にいた方が楽しいだろうと思い
『分かりました。もし迎えに行けたら行くので、帰る時は連絡下さい。父をよろしく』
と返信した
最近実家に帰ってなかったので、父が祥子に連絡して出て来るように言ったんだろうと想像して、早めに仕事を切り上げて帰ろうと思った
しかし早く帰ろうと思ったのだが、なかなかキリがつかず、21時を過ぎようとしていた
祥子からも連絡がなかったので、休憩がてら実家に電話をかけようと席を立とうとしたとき、見慣れない番号から電話がかかってきた
「もしもし?」
「警察のものですが、皆川祥子さんのご主人でしょうか?」
「ええ、祥子は妻ですが……」
「奥さんが、事故に遭われまして」
「事故!?妻がですか?」
僕の声に部下達が注目した
「それで、妻は?」
「大丈夫です、命に別状はありません。ちょっと車と接触して転んだ時に、足を挫いた程度ですので。すぐに病院に来られるでしょうか?」
「すぐに行きます」
「分かりました。場所は……」
「……はい。はい。分かりました。すぐ行きますので。はい、お手数をおかけしました」
電話を切ると、みんなが心配そうに見ていた
「命に別状はないらしい。大丈夫だから」
そう言うと、みんなほっとした顔をした
「相川、悪いが後のことは……」
「分かってます。さっきタクシーを呼びましたので、もう会社前に着いていると思います。それと、どんなに遅くなってもいいので連絡してください。俺だけでもいいので」
「……分かった。じゃ行ってくる」
会社の前に着いていたタクシーに乗り込み、病院へ向かった
その途中、父と義母に連絡をしたら2人ともすぐに向かうからと電話を切った
警察の人は命に別状はないと言っていたけど、祥子に会うまでは安心出来なかった
もし、祥子に何かあったらどうしようとそればっかり考えていた
手が震えて止まらなかった
病院に着いて、病室がどこか聞き、急いで向かった
祈るようにドアを開けた
「慎一郎さん……」
そこには、右腕と右足に包帯を巻かれて、右頬に傷を作った祥子がいた
「祥子……」
思わず抱きしめた
よかった生きてたと、やっと安心できた
僕の腕の中に祥子がちゃんといる
神様なんか信じていなかったが、この時ばかりは心から感謝した
「慎一郎さん、心配かけてごめんなさい」
祥子が左腕だけで僕を抱きしめた
「帰るとき連絡してって言ったのに、どうして連絡くれなかったの?警察から電話があったとき、どんなにびっくりして、心配したか祥子に分かる?」
体を離して、祥子の左頬に手を当てた
祥子は下唇を噛んで、目に涙を溜めていたが、僕は続けた
「会社からここに来る間だって、警察の人は命に別状はないと言ってたけど、本当はどうなんだろうって、もしも祥子に何かあったらどうしようって、そればかり……」
思わず、声が詰まった
祥子は涙をポロポロ流していた
「でも良かった。祥子、生きてた……」
自分の目から涙が零れたのが分かった
祥子がそれを拭ってくれた
今は、それだけで充分だった
祥子の話によると
父と夕飯を食べて、さあ帰ろうとした時、まだ20時前だったので、僕もまだ仕事だろうからと、帰り着いたら連絡しようと思ったらしい
父も、送って行こうと申し出たのだが、電車もあるからとそれを断り、1人で帰っていた途中で、事故に遭ってしまったと
そうこうしていたら警察の方と、車を運転していた中年の女性が病室にやってきた
その女性はこっちが恐縮するくらい必死に謝罪し、これからもちゃんと誠意を持って対応しますからと、警察の方と一緒に帰って行った
それと入れ替わりに、父が到着した
「祥子さん!大丈夫か?やっぱりあの時、送って行くんだった。本当に済まない。慎一郎、本当に申し訳ない」
「お義父さん!頭を上げてください。私の不注意なんですから」
「いや、でも」
「父さん、もういいから。こうして祥子も無事だったんだし。誰が悪いとか、そんなのないから」
「でも、本当に大丈夫なのかい?」
「足は挫いてるけど、あとは大したことないって。念の為、明日は頭の検査するから、まだ退院できないけど、大丈夫だから父さん」
それを聞いた父はやっと安心した顔をした
「お義父さん、心配かけて申し訳ありません」
「大したことなくてよかった。何かあったらどうしようかと思ったよ。慎一郎、加山さんは?」
「すぐに向かうとは言っていたけど、まだかかるんじゃないかな」
義母が到着するまで時間があるだろう思い、相川に連絡しようと病室を出た
相川に、祥子はちゃんと無事だったからと伝えると本当に安心してくれて、他の部下達にも伝えておくと言ってくれた
「それと、明日は午後から出勤してくれればいいですからね、部長」
「いや、明日の午前中は来客の予定があっただろう?」
「大丈夫ですよ。部下を育てたのはあなたですよ、部長。神崎係長と、俺で対応しますので。第2課の小野課長も了承済みです」
「分かった。頼んだぞ」
「はい。それじゃ」
部下を育てたのはあなたですよ、か……
相川も言うようになったと思いながら、病室に戻ると、中から義母の声が聞こえてきた
明らかに怒った声だった
「どれだけ心配したと思ってるの!だから考え事しながら歩くなって、あれだけ言ってたでしょ!30にもなって、そんなことも分からないの!」
父が義母をなだめているが、一向に収まらない
祥子も、大きな声出さないでと反抗してるし、義母を連れて来たのだろう、義兄の修司さんも呆れた顔をしている
「あんたに何かあったらどうしようって、そればっかり……祥子、子供が親より先に逝くほどの親不孝はないんだからね。頼むから、それだけはしないでちょうだい」
「お母さん……」
「あんたたち3人が先に逝ってしまったら……母さん、気が狂って死んでしまう……」
そう言った義母の後ろ姿は震えていた
「お母さん、ごめんなさい」
「そうだよ、母さん。俺も祥子も昇司も、母さんより先になんか逝かないから。ちゃんと、母さんを見送るまで、死なないって」
「頼むよ、本当に。頼んだからね?」
僕と父は、なんとなく病室を出た
「父さん」
「どうした?」
「親って凄いね……」
父はふっと笑って言った
「父さんもお願いしていいか?」
「何?」
「お前たちも、父さんより先に死なないでくれ。頼む」
「うん、分かってる」
しばらくの間そうやって、父と2人で座っていた