お見合い結婚時々妄想
私が義父と約束したのは、結婚前にお互いの親と4人で、会った時
母と慎一郎さん、義父と私がそれぞれ2人で話した時だ
「その時に、父さんはなんて言ったの?」
落ち着きを取り戻した慎一郎さんは聞いてきた
「これから先、慎一郎に家族が増えたら、きっと子供の頃の事を、母親の事を思い出して、絶対に悩むだろうって。お義父さん、おっしゃってた」
「父さんには全部お見通しだったって訳か」
「だって、慎一郎さんを育てた人よ?」
それもそうだと笑う
「それでね、その時は私に慎一郎さんの背中を押して欲しいって、自分の事は何も気にしなくていいから、会ってきなさいって。出来れば祐二郎さんも一緒に会いに行って欲しい……そう言って、私にそのメモを託されたの」
「でもなんで、母さんの連絡先を父さんが?」
「お義母さん離婚してからも、お義父さんに慎一郎さん達に会わせて下さいって、何度も何度も頼み込んだって。お義父さんも最初は突っぱねてたらしいんだけど結局根負けしちゃったみたいで……」
慎一郎さんがふっと笑う
「父さん、母さんのこと本当に好きだったからな」
「そうなんだ……それで、慎一郎さん達の写真を定期的に送ることにしたって」
「だから連絡先を知ってたんだ」
「それに……」
慎一郎さんが、ん?と首を傾げる
「私達が結婚してから、会いに行ったって、お義父さん」
「え?」
「それはこの前、聞いたんだけど……」
心底びっくりしている慎一郎さんの頬を両手で包む
「祥子」
「大丈夫、慎一郎さん。お義母さん、元気にしてらしたって。私達の結婚式の写真見て、凄く喜んでたそうよ」
「そう。元気にしてるんだ。母さん……」
泣きそうな顔をしたので、そっと抱き締めた
「慎一郎さん、お義母さんと会っていいんですよ。誰にも遠慮なんてしないで、会ってきたらいいんですよ」
声も出さず頷いている
私は慎一郎さんの背中をポンポンと叩いた
その時、お腹の赤ちゃんが動いた
2人とも顔を見合わせて笑った
慎一郎さんはお腹を撫でながら、こう言った
「お父さん、君のお祖母ちゃんに会って来るからね」
その顔は、迷ってなんかいなかった
それから数日後、慎一郎さんはお義母さんに会いに行った
義弟の祐二郎さんと一緒に
ちょっと緊張した顔をしていたので、軽くキスをして送り出した
「行ってらっしゃい」
「行ってきます」
慎一郎さんが出掛けて一息ついた後、電話をかけた
「はい、皆川です」
「あ、お義父さん?祥子です」
「祥子さん。体調はどうだい?赤ちゃんは元気に大きくなってるかな?」
「はい。元気に動いてますよ」
「そうか」
「お義父さん。慎一郎さん、さっき出掛けました。途中で祐二郎さんと合流して、会いに行くそうです」
「そうか。祥子さん、ありがとう」
「いえ。私はただ約束を守っただけですから」
「ありがとう。そう言ってくれて、私も嬉しいよ」
「……あの、お義父さん?」
「ん?なんだい?」
義母の事を聞いてから、ずっと気になっていた事があった
でも、私が聞いてもいいものか……
「祥子さん?どうした?」
「あの、お義父さんは、お義母さんのこと、まだ……」
義父が息を呑んだのが分かった
やっぱり聞くんじゃなかった!
「ごめんなさい!すいません、忘れて下さい! 」
必死に謝っていると、電話の向こうから義父が「いいんだよ、祥子さん」と言ってくれた
「君は私の娘だ。何も遠慮なんてしなくていい」
「お義父さん……」
「祥子さん?」
「はい」
「君の思っている通りだよ」
「え?」
「私は、あの子達の母親を、小夜子を愛してる。未だにね」
声を出せずにいると、義父はふっと笑って、小さく言った
「私の人生で、小夜子以上の女性はいないんだよ」
私はまだ電話が繋がっているというのに、涙を堪えることが出来なかった
母と慎一郎さん、義父と私がそれぞれ2人で話した時だ
「その時に、父さんはなんて言ったの?」
落ち着きを取り戻した慎一郎さんは聞いてきた
「これから先、慎一郎に家族が増えたら、きっと子供の頃の事を、母親の事を思い出して、絶対に悩むだろうって。お義父さん、おっしゃってた」
「父さんには全部お見通しだったって訳か」
「だって、慎一郎さんを育てた人よ?」
それもそうだと笑う
「それでね、その時は私に慎一郎さんの背中を押して欲しいって、自分の事は何も気にしなくていいから、会ってきなさいって。出来れば祐二郎さんも一緒に会いに行って欲しい……そう言って、私にそのメモを託されたの」
「でもなんで、母さんの連絡先を父さんが?」
「お義母さん離婚してからも、お義父さんに慎一郎さん達に会わせて下さいって、何度も何度も頼み込んだって。お義父さんも最初は突っぱねてたらしいんだけど結局根負けしちゃったみたいで……」
慎一郎さんがふっと笑う
「父さん、母さんのこと本当に好きだったからな」
「そうなんだ……それで、慎一郎さん達の写真を定期的に送ることにしたって」
「だから連絡先を知ってたんだ」
「それに……」
慎一郎さんが、ん?と首を傾げる
「私達が結婚してから、会いに行ったって、お義父さん」
「え?」
「それはこの前、聞いたんだけど……」
心底びっくりしている慎一郎さんの頬を両手で包む
「祥子」
「大丈夫、慎一郎さん。お義母さん、元気にしてらしたって。私達の結婚式の写真見て、凄く喜んでたそうよ」
「そう。元気にしてるんだ。母さん……」
泣きそうな顔をしたので、そっと抱き締めた
「慎一郎さん、お義母さんと会っていいんですよ。誰にも遠慮なんてしないで、会ってきたらいいんですよ」
声も出さず頷いている
私は慎一郎さんの背中をポンポンと叩いた
その時、お腹の赤ちゃんが動いた
2人とも顔を見合わせて笑った
慎一郎さんはお腹を撫でながら、こう言った
「お父さん、君のお祖母ちゃんに会って来るからね」
その顔は、迷ってなんかいなかった
それから数日後、慎一郎さんはお義母さんに会いに行った
義弟の祐二郎さんと一緒に
ちょっと緊張した顔をしていたので、軽くキスをして送り出した
「行ってらっしゃい」
「行ってきます」
慎一郎さんが出掛けて一息ついた後、電話をかけた
「はい、皆川です」
「あ、お義父さん?祥子です」
「祥子さん。体調はどうだい?赤ちゃんは元気に大きくなってるかな?」
「はい。元気に動いてますよ」
「そうか」
「お義父さん。慎一郎さん、さっき出掛けました。途中で祐二郎さんと合流して、会いに行くそうです」
「そうか。祥子さん、ありがとう」
「いえ。私はただ約束を守っただけですから」
「ありがとう。そう言ってくれて、私も嬉しいよ」
「……あの、お義父さん?」
「ん?なんだい?」
義母の事を聞いてから、ずっと気になっていた事があった
でも、私が聞いてもいいものか……
「祥子さん?どうした?」
「あの、お義父さんは、お義母さんのこと、まだ……」
義父が息を呑んだのが分かった
やっぱり聞くんじゃなかった!
「ごめんなさい!すいません、忘れて下さい! 」
必死に謝っていると、電話の向こうから義父が「いいんだよ、祥子さん」と言ってくれた
「君は私の娘だ。何も遠慮なんてしなくていい」
「お義父さん……」
「祥子さん?」
「はい」
「君の思っている通りだよ」
「え?」
「私は、あの子達の母親を、小夜子を愛してる。未だにね」
声を出せずにいると、義父はふっと笑って、小さく言った
「私の人生で、小夜子以上の女性はいないんだよ」
私はまだ電話が繋がっているというのに、涙を堪えることが出来なかった