失恋の傷には媚薬を
『亮平さん…』
「ん、目が覚めちゃった?朝まで寝てな。部屋まで送るから、一緒に出社しよう」
クルッと椅子ごと振り返った部長に
私は帰ると告げた
今から?と怪訝そうな顔をする部長
ソファに置かれたコートとバックを取る
『まだ終電あるし、それに朝って女は時間がかかるのよ、待たせるわけにいかないわ』
そんな言い訳、上っ面だ
本当は
今はこれ以上、一緒に居たくない
これ以上、部長の優しさ、温かさに触れたら
また良くないことが起こるかもしれない
大丈夫とわかっていても
過去の傷が疼いてしまう
「…わかった。駅まで送るよ」
渋々な顔の部長
見て見ぬ振りをし玄関へ向かった