失恋の傷には媚薬を


話す必要がないと思っていた
だけど、それは間違いだった



“今日、遅くなるわ”



そう連絡来たのは
帰宅してから30分後のこと

亮平さんは毎日必ず
自分の帰宅を連絡してくれる
マメだな、と感心するし
若いなっと驚くこともある


今日の連絡も、その日課だ
付き合いか何かだろうと思い
当たり障りない返信をした





それが、次の日も
その次の日も…
職場では相変わらず忙しく
今は亮平さんが言う前にお茶を煎れることが多い
だから亮平さんの変化に気がつかなかった



「楓先輩、ちょっといいですか?」



それは昼休みに入る前
里奈が資料室からファイルを取りに帰って来たとき
神妙な顔で私に話しかけてきた

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