失恋の傷には媚薬を
このままだと亮平さんが
怒り出すのではないだろうか、
それにこんな夜に大声で
近所迷惑にならないか、と
やはり私が出た方が良いのではないかと
ドアノブを回そうとした
「部長、私は楓先輩に幸せになってもらいたいんです。部長なら楓先輩を幸せにしてもらえると信じてました…、だから今でも信じられません」
「あ?何言っているんだ?いいから開けろっ」
「楓先輩が何故、こうなったのか…わかりませんか?何故、昨日…雨に打たれなきゃならなかったのか…」
里奈の言葉にまた手が止まる
ドクドク、と心臓の音がうるさいくらい
鳴り響いている
「部長…昨日は取引先から直帰でしたよね?私たちは定時で上がり、買い物をしてから帰ったんです」