失恋の傷には媚薬を
オンとオフ…
亮平さんは表情一つ変えず
いつもの横峰部長として接している
「病み上がりで悪いが、お茶を頼む」
わかりました、と言い
給湯室へ向かうが心穏やかではない
それでも今は気持ちを切り替えるしかない
「楓先輩…」
『大丈夫よ、お茶を煎れるだけよ』
心配そうな里奈に
ニコっと笑い安心してもらう
里奈にこれ以上迷惑はかけられない
いつも通り、いつも通り…
そう自分に言い聞かせても
急須を持つ手が震えている
「楓」
急な呼びかけに驚き
持っていた急須と湯のみがぶつかってしまい
お茶をこぼしてしまった
「悪い、大丈夫か?火傷してないか?」
私の手を確認しようと
亮平さんは手を取ろうとする