失恋の傷には媚薬を



「病み上がりなので、少し休ませてから早退します」



「そうね、楓ちゃんが倒れるなんて尋常じゃないな」




仕切られたカーテンの向こうで
里奈と周先生の声がした
ここは医務室
周先生は、会社専属の医者だ
あの頃に里奈同様
お世話になった人だ


何かあったのか?と
里奈に問いかけた周先生
ちょっと…、と歯切れが悪い里奈



「いや、やめておこう。プライベートな話は本人が言いたくなったら聞くタイプなんだ」



ここ最近、医務室に来ることがなかった
周先生の声はいつも私を安心させてくれる
それもそう、周先生はカウンセラーでもある
企業で働く人たちの多くはストレスを抱えている
そんな人たちの話を聞くのもお仕事の一つだ

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