失恋の傷には媚薬を


中を開ければ
食料品や何故か調味料
そして父の一言手紙
“気が向いたら帰っておいで”


毎度入っている手紙
でも一度も帰る気にはなれない
食料品の中に
私が好きな漬物も入っている
既製品ではなく、手作りだ
父が漬けるわけがない
母の手作りの漬物
それを見ると、帰りたくならないわけではない
正直、今更って考えもある


お昼にご飯のお供に漬物を食べようかと思ったら
またインターホンが鳴った
宅配便かと玄関ドアを開けると
見慣れない人が立っていた



「ありがとうございました」



帰っていったのは宅配サービス
私の手には2段の重箱
頼んだ覚えはないと言ったが
“ご依頼お支払いは横峰様から頂いております”
そう言われると何も言えなかった

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