失恋の傷には媚薬を
姉は母とキッチンに立っていたから
私がお茶を煎れていたことなんて知らない
いただきます、と
亮平さんが口にするとニッコリする
「たしかにうまいです。楓が煎れてくれるお茶より少し柔らかい気がします」
お茶に柔らかい?
わからない私と姉だが
うんうん、と嬉しそうにうなずく父
お茶なんてどうでもいい、と
話題を変えようとした姉だが
亮平さんがお茶の話題を父とし始めてしまい
つまらなさそうにし始めている
何でも思い通りにはいかないのよ、
そう言いたかった
暇を持て余した姉は誰かにメールをしているようだ
急遽キャンセルになった予定を
埋めたかったのだろう
嬉しそうにスマホを閉じていた