失恋の傷には媚薬を



本当にそう思っていた
確かに怒りの方が大きくて
頭がごちゃごちゃだし
心も複雑だった
だから、姉からも両親からも離れた
私がいない方がいいって思ったから



『でも、もうやめよう。健ちゃん、ちゃんと幸せになって。私たちはもう過去なんだよ。どんなことがあっても、あの時には戻れないしやり直すことなんてできない。…前を向くしかできないんだよ』




健ちゃんが
姉からどんな風に焚きつけられてここにきたのか
それはわからない
でも、もう過去や姉に囚われて欲しくない



「楓…俺は、楓と、」



そこまで言って、健ちゃんは口を摘んだ
何を言いたかったのか見当はついていた
だから
私は亮平さんの胸へ顔を埋めた

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