失恋の傷には媚薬を
私には亮平さんがいる
健ちゃんに言った言葉は
自分自身にも投げかけた言葉
もう過去にとらわれない
前を見て、歩いて行かなきゃ
「悪かった…楓、幸せにな、」
健ちゃんは
その言葉を残し出て行った
これで良かったのだろうかと不安になったが
私を抱き寄せる腕が
大丈夫、と安心させてくれた
一件落着…と思った
「使えないわね、」
冷たい声に穏やかだった心は
一瞬にして怒りを覚えた
その怒りは私を動かしたが
パシッ、という音に驚いた
お父さんが姉を叩いた
それは初めて見る光景
お父さんは穏やかな人で心配性な人
決して人の悪口を言ったり
人を傷つけたりしない人だ