失恋の傷には媚薬を
本当はわかっていた
あの時、健ちゃんともっと話し合うべきだった
お姉ちゃんとちゃんと喧嘩すればよかった
でも、どうでもよくて
その場から逃げたかった
『…んっ、…っ』
「大丈夫、そばにいるから…」
亮平さんの腕の中にいる
それだけで安心して眠れる
『あのまま、運転してたら事故を起こしてたかも』
そうだな、と亮平さんは笑ってくれた
お父さんに付き合ってお酒を飲んでしまった亮平さんにかわり、帰りは私が運転する予定だった
でも、姉と健ちゃんの出現で
私は少し動揺していた
「今日はこっちで泊まって朝早く帰ろう」
そう提案してくれた
明日は月曜日、仕事だ
だから今日帰るのがいいはずだが
平常心を保って久しぶりに運転をする勇気はなかった