失恋の傷には媚薬を


ピンポーン



珍しくインターホンが鳴った
モニターを確認すると
思ってもみたいお客さんだった



どうぞ、と
オートロックを解除し
客人を招き入れた

本当はどうしようか悩んだ
けど、もう2度と無いだろうと覚悟を決めた



「久しぶりね、元気だった?」



『…別に』




何事もなかったかのように
優しい顔をして私を見つめるお姉ちゃん



「あれ?引っ越し?」



『うん』



姉には知らせていない住所
父から聞き出したのだろう

両親に亮平さんが転勤になったこと
私が会社を辞めること
一緒について行くことは言っていない

もし伝えていたら
姉にも伝わっていただろう



『…何か、用事?』


何のために
わざわざココに来たのか
それが気になっていた

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